普段生活をしているなかで、人を殴ると、通常は暴行罪として刑罰の対象となります。
もっとも、ボクシングの試合で、選手が相手を殴っても、通常は刑罰の対象にはなりません。
どちらの場合も結論としては妥当に感じられますが、同じように人を殴っているにもかかわらず全く違う結論になるのは、法律が次のように定められているからです。
刑法208条「暴行を加えた……ときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」(原則)、ただし、刑法35条「法令又は正当な業務による行為は、罰しない。」(例外)。
つまり、人を殴る(暴行を加える)と刑罰の対象となる(原則)、ただし、ボクシングの試合でルールを守って殴ったとき(正当な業務による行為)は刑罰の対象にならない(例外)とされているのです。
客観的には刑罰の対象となる行為でも、社会生活上、正当なものとして許容される行為については、罰しないとされているのです。
このように刑法35条に定められた行為を「正当行為」と呼び、正当行為のうちスポーツなどの行為については「正当業務行為」と呼んでいます。
もっとも、正当業務行為とされるには、スポーツの目的で一定のルールを守ってそれが行われることが必要です。
ですから、ボクシングの試合でも、インターバルに相手の選手を殴ったような場合には、この殴るという行為が、スポーツの目的ではない又は一定のルールを守っていないと判断されれば、正当業務行為にはあたらず、刑罰の対象になります。
2018.06.01