みらいブログ

2016.08.22

労働審判、ご存知ですか?

半澤 茜

 お盆も明け、当事務所では、17日から通常どおりの営業となっております。
 ということで、私も頭を切り替えて、たまには真面目に法律に関する記事をお届けしようと思います。

 さて、労働審判というのは、解雇や残業代の不払い等の労働者、使用者間の法的なトラブルを解決する手続きの一つです。裁判所で行う手続きですが、特色は、原則として、3回以内の裁判所への出頭により短期間に、結論が得られる、というところにあります。この間に、労働者側、使用者側がそれぞれ証拠を出しあい、話し合いによる解決を目指します。
 「話し合いにならないから、弁護士に相談に来ているのですが(涙)」と思われるかもしれません。なんと、労働審判が申立てられた事件の70%が、話し合いで決着がついているというデータが存在します(平成24年時点)。
 なぜ、それほどまでに、話し合いが成立するのでしょうか。
 労働審判の手続きでは、裁判官と専門的知識と経験を有する労働者側の委員、使用者側の委員の3名で組織される労働審判委員会が、当事者の提出した証拠を見比べ、当事者から直接話を聞きます。そして、法律的に、どちらの主張が妥当であるか検討し、その結果を踏まえて、柔軟な解決案を提示したり、場合によっては当事者を説得します。例えば、解雇の有効性が争われる事案などでは、「法的には、解雇は無効であると考えますが、労働者の方に勤務を継続したいという積極的な意向もないようですので、雇用契約の合意による終了することとして、そのかわりに、給料の数か月分などの解決金の支払いをしては/受けてはどうですか?」などといった提案がなされる例が多いといえます。
 審判の1回目ないし2回目で、裁判所の見解(解雇が有効か無効かなど)を教えてもらえるというのも労働審判の特色です。裁判官が法的な見解を述べているわけですから、両方の当事者ともこれを全く根拠がないものとして無視することは容易ではありません。
 そのため、労働者・使用者双方とも、各々の事情や交渉材料を踏まえて、合意が出来れば、結果として、裁判所に1回、2回行くだけで(!)、紛争が話し合いによりスピード解決することになります。
 判決を求める手続きでは、判決を得るまでに数年かかることも多いのに対し、労働審判手続では、判決よりも、圧倒的に早く、解決に至ります。それだけで、当事者の方々の精神的な負担はずいぶん軽減されているように見受けられます。
 3回以内に話し合いによる解決が出来ない場合であっても、3回の期日が終了した後に、労働審判がなされ、その時点における裁判所の判断を知ることが出来、それを踏まえた解決を行うことが出来る場合もあります(他方で、「審判の内容にも納得できない!」ということであれば、異議を申し立てることで、労働審判事件は訴訟に移行します。)。
 労働者側でも、使用者側でも、見通しを持って臨むこと、短期間にしっかりとした準備(相当な量になります…)を行うこと、ほとんど1回目で方向が決まってしまう期日において、全ての主張を漏らすことなくしつくすこと、裁判官や委員の質問に適切に答えること(当事者が緊張したり、勘違いしたりせずに答えられるようにこちらも準備をしておくこと)が求められますので、弁護士としては、準備が色々と大変、というのも実感としてはあるのですが、なによりこんなに早期に解決してよかった、という依頼者の皆様の感想を聞くと使い勝手の良い制度であると感じます。
 様々な紛争解決手段があり、それぞれメリット・デメリットを比較して手続きを選択することになりますが、労働に関する法的紛争の解決手段としての「労働審判」、知っておくと役立つことがあるかもしれません。


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