みらいブログ

2020.07.16

司法改革と弁護士の活動

佐藤 邦男

 20年以上前になりますが、1997年7月、当時の小渕恵三内閣の下に司法制度改革審議会が設置され、大学や法曹だけでなく、産業界、労働組合、消費者団体など、幅広い関係者が委員として就任しました。

 審議会では、国内外の調査を行い、議論や検討を行い、2001年6月に「司法制度改革審議会意見書」を内閣に提出しました(https://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/report/ikensyo/index.html)。

 意見書では、「国民の期待に応える司法制度の構築」、「司法制度を支える法曹の在り方」、「司法の国民的基盤の確立」といった提言がなされ、具体的制度として、裁判員裁判や法科大学院(ロースクール)などがスタートすることになりました。

 この一連の改革が「司法改革」と呼ばれるものです。

 私自身も、司法改革の最中に学生時代を過ごしたので、日本中で司法を巡って色々な議論がなされていたことを覚えています。とくに、法曹人口を増員して、法的に解決をする仕組みを、行政、企業、地域社会の隅々にまで行き渡るようにしたい、というメッセージは、よく出されていたように記憶しています。

 それから20年余り経過し、昨年、私の出身大学の先生方が、「一度、原点に立ち返ってみて、到達点や課題について整理してみよう」と呼びかけられ、議論や検討会を行い、「現代日本の司法」という書籍にまとめて出版しました(https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8255.html)。

 私も共著者の一人として執筆を担当し、現在拠点にしている尾道地区での活動状況等を執筆しました。

 執筆前に調査したのですが、2001年当時の尾道地区(尾道市・三原市・世羅町)に所在している弁護士は6名でしたが、執筆時の2018年には18名と3倍増となりました(広島県全体の弁護士数は2001年当時は271名、2018年時点は577名で約2倍増でした。)。

 尾道の裁判所で行われている裁判の件数自体は、民事・刑事ともに下落傾向にありますが、自治体や消費者センターの市民相談や、高齢化に伴う成年後見などのニーズは強いと思います。そうしたニーズにも対応できるマンパワーがあるということは、司法改革の目標の一つを達成したと評価できるように思います。

 他の共著者の活動をみると、外国に進出する日系企業の企業内弁護士、外務省・国税庁・自治体など行政内部で業務を行う弁護士、NPO法人の業務に参加する弁護士、その他にも、マスメディアや芸能界、児童相談所、学校で活動する弁護士など、これまで司法の領域と認識されていなかった分野で活動している弁護士も増えているようです。

 そう言われると、お昼のワイドショーで、弁護士がコメンテーターとして出演しているのは今では日常的な風景として定着しています。不倫、パワハラ、芸能事務所の所属に関するテーマも法的観点から議論する、ということが、お昼の番組で日常的に展開されるというのは、20年前には考えられなかったことで、隔世の感があります。

 広島県内の弁護士は、今も多くが裁判所を中心に活動していますが、企業内・行政内弁護士も増えており、今後はさらに活動の幅が広がるように思います。

 私自身は、引き続き、広島県内を中心に、法的に困っている方に対して、確実に司法の手を届けるべく、活動を深めていきたいと考えています。

お問合せ 大竹支所尾道支所 広島本所