みらいブログ

2020.06.08

抱き合わせ販売

見之越 常治

 新型コロナウイルス感染症の影響は大きく、私たちは、不自由な生活を余儀なくされています。とりわけ、梅雨の時期である6月に入っても手放せなくなったのがマスクです
このマスクですが、今年の2月頃には店頭から消えてしまい、簡単に購入できなくなったことは記憶に新しいです。
 
 報道によりますと、あるドラッグストアが、マスクを他の商品とセットで販売していました。この事態を重く見た公正取引委員会が当該事業者が所属する関係業界団体に対して、独占禁止法が禁止する「不公正な取引方法」(独占禁止法19条)の一つである「抱き合わせ販売」 (一般指定10項) を行わないように、会員企業に周知することを要請しています(令和2年2月27日付)。
 
 でも、何かと何かがセットで販売されることは珍しくありません(例:歯ブラシと歯磨き粉)。 歯ブラシと歯磨き粉は、通常、両方を同時に使うため一緒に購入できると便利であり、セット販売価格として安く提供されることもあって消費者にもメリットが大きいので、独占禁止法で禁止される販売方法とは言えません。
 では、セットで販売する方法の中でも、「抱き合わせ販売」 が禁止されているのは、なぜでしょうか。
 端的な理由の一つに、マスクだけが欲しいのにマスク以外の商品まで購入させられてしまこと、つまり、購入する側の商品選択の自由が妨げられてしまう点にあります。
 
 先の例で、歯ブラシと歯磨き粉のセット購入が嫌であれば、歯ブラシと歯磨き粉を別々に購入すれば良いだけです。歯ブラシと歯磨き粉のセットでの購入を強いられることはありません。
 ただ、何かをきっかけに、多くの人が、歯ブラシのみを欲しがって,店頭でも売られなくなる一方で,誰も歯磨き粉を買い求めない様になった社会を想定してみます。マスクのときと同様、歯ブラシと歯磨き粉のセット販売が、欲しくもない歯磨き粉を購入させられたとして「抱き合わせ販売」に当たり、違法となり得ることになります。
 社会情勢の変化によって,適法であった販売方法が違法と評価されることもあり得ることの典型といえるでしょう。
 
 6月に入り、緊急事態宣言が解除されたこともあってか、事務所近くのドラッグストアの店頭でもマスクが売られる様になりました。
 新型コロナウイルス感染症が本当の意味で収束し、マスクを手放しても問題ない生活が再び戻ってくることを願って止みません。

 

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