みらいブログ

2015.11.10

スポーツをめぐる法的問題

成廣 貴子(2023年12月末退所)

 趣味として、あるいは健康のためなどスポーツの目的は人それぞれですが、子どもから大人まで、様々な形で楽しまれています。スポーツは、ビジネスにも繋がります。最近では、ラグビー日本代表の大活躍により、それまで関心がなかった方が興味を持つようになり、観戦者数が増加し、関連のグッズが数多く売れたようです。
 他方、スポーツ指導者による行き過ぎた指導、学校における部員同士の暴力、長時間練習によるオーバーユース(使い過ぎ)など、スポーツ中の事故や関係する事件も繰り返し起きています。

 このような問題への弁護士の関わりをテーマにした日本弁護士連合会主催のシンポジウム「青少年アスリートのスポーツ権の確保と弁護士の役割~青少年アスリートの心身の健康と安全を守るために~」が先日開催され、参加しましたので、その一部をご紹介します。
 野球が盛んな徳島県では、1981年以降、県内全ての小学生チームが参加する野球大会の現場に医師等が出向き、小学生選手の検診を行っています。検診結果によれば、半数近くの選手に痛みの経験があり、痛みが発生した場所は、肘関節が約3割と最も多く、続いて、肩関節、足・足関節、踵、膝関節、腰となっています。予防と共に、早期発見が大事で、早期に治療を行えば、治る可能性が高いようです。しかし、自覚症状がない場合もあり、自覚症状がある場合も、親・指導者や本人の意向で、治療を後回しにして症状を悪化させ、選手生命が絶たれてしまうことも少なくないようです。
 海外に目を向けると、アメリカでも、青少年のオーバーユースは問題になっており、例えばリトルリーグ(少年野球)では、投手の投球制限や変化球を投げる場合の年齢制限があるようです。また、元NFL(アメリカンフットボールリーグ)選手が起こしたクラスアクション(集団訴訟)などにより、脳震盪問題への社会的関心は高く、脳震盪を起こした選手を競技に戻す際のルールができたりしているようです。最近も、NCAA(全米大学競技協会)に対し、大学生アスリートがスポーツ時の肖像権を主張し、利益の分配を求めたオバノン訴訟が起こされ、同会が定めるルールが独占禁止法に違反するとの学生側の主張が控訴審で認められました。

 ところで、スポーツ立国を目指しているわが国では、2011年にスポーツ基本法が制定され、同法の目的は「スポーツに関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務並びにスポーツ団体の努力等を明らかにするとともに、スポーツに関する施策の基本となる事項を定めることにより、スポーツに関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民の心身の健全な発達、明るく豊かな国民生活の形成、活力ある社会の実現及び国際社会の調和ある発展に寄与すること」とされています(第1条)。同法を受けて、本年10月にはスポーツ庁が発足しました。この発足によって、これまで述べましたような課題がどのように解決されるのか、今後の動きを注視していく必要があると考えます。
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