FIFAワールドカップカタール大会2022の日本代表の戦いが終わりました。強豪国ドイツ、スペインに勝利し、グループリーグを首位で突破して世界を驚かせたサムライブルーの選手たちは、素晴らしいプレーでたくさんの感動を与えてくれました。4年後の大会もとても楽しみです。
私は、少し前から、サッカーの審判の活躍に興味を持つようになり、今大会でも、世界の審判がどんなレフェリングをしてどんな風に試合をコントロールして行くのかと、審判にも着目しながら各試合を見ています。
主審は、その場で何が起こったかという「事象」を確認して、ルールである「競技規則」を、解釈・適用し、試合を運営します。この作業は、まさに、法廷で裁判官が行っていることと似ています。しかし、裁判官とは異なり、主審は、「ちょっと休廷して」「次回期日までに」などと、一度中座して時間を取ってじっくりと検討することはできません。
「プレーに関する事実についての主審の決定は、得点となったかどうか、または試合結果を含め最終である。」とされるなど、主審には非常に大きな権限が与えられていますが、その反面、主審には「競技規則を施行する」、「その他審判員と協力して試合をコントロールする」責任があるともされています(いずれも、競技規則第5条)。
広いフィールドでは、ほんの一瞬、瞬きをする間にも、接触、負傷、チーム同士の対立など、さまざまなことが起きます。主審が説得的なジャッジをし、両チームと適切なコミュニケーションを図り、試合のコントロールをすることができなければ、大怪我に繋がるラフプレーが頻発したり、乱闘などが起きて、あっという間に試合の魅力が損なわれてしまいます。イエローカード、レッドカードが飛び交い、退場者が続出するような試合は誰にとっても望ましいものではありません。
ごくわずかな時間で事実認定をし、間違いなくルールを適用して、競技を円滑に進行させ、エキサイティングで魅力的なサッカーを成立させる職責を負う主審の精神的プレッシャーは計り知れません。
ワールドカップで笛を吹いている主審は、皆さん、このハードな知的作業を、何万人何千万人という衆人環視の中で、90分間もの間(延長があればそれ以上)、絶えず、世界のトップクラスの選手と同じような速度で走りながら行っているのですから、畏敬の念を抱きます。
ワールドカップ史上初の女性審判の一人として選出され、大きな話題を呼び、第4の審判として活躍されている山下良美さんなど、4年後の大会では日本の審判の活躍も一層楽しみです。