政府は昨年6月、「未来投資戦略2017」を決定し、その中で、「迅速かつ効率的な裁判の実現を図るため、諸外国の状況も踏まえ、裁判における手続保障や情報セキュリティ面を含む総合的な観点から、関係機関等の協力を得て利用者目線で裁判に係る手続等のIT化を推進する方策について速やかに検討し、本年度中に結論を得る。」とうたい、これを受けて10月に「裁判手続等のIT化検討会」を設置しました。
同検討会は今年の3月までの半年間に8回の会議を行い、3月30日付で「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ―「3つのe」の実現に向けて―」を発表して終了しました。
「取りまとめ」によれば、3つのeとは次の通りです。
①e提出(e-Filing)
当事者が裁判所に提出する書面は電子ファイルのみとし、オンライン提出を義務付ける
②e事件管理(e-Case Management)
裁判所が保有し管理する事件記録や事件情報はすべて電子情報化して、訴訟当事者本人及び訴訟代理人の双方がオンラインでアクセスできるようにする
③e法廷(e-Court)
当事者の一方又は双方が法廷に出席しなくてもよいように、テレビ会議やウェブ会議を活用する
海外に目を向けると、アメリカ、シンガポール、韓国等では、IT化した裁判手続等の運用が広く普及・定着しているほか、ドイツ等でも、近年、IT化の本格的取組が着実に進展しており、日本でも裁判手続きのIT化は避けられない、裁判手続きがIT化すれば訴訟が早く決着し弁護士費用も下がるので依頼者の利益になる、という意見があります。
他方で、裁判所の電子情報ネットワークが不正アクセスされて個人情報が流出する危険性を軽視すべきではない、裁判手続きがIT化すると巨大事務所が全国に宣伝して事件を安価で引き受け、IT化に乗り遅れた地方の弁護士は事件を受任できず、あるいは事件単価が下落することによって経営困難となるが、地域に弁護士がいなくなれば結局は依頼者が利益を損なわれる、との意見もあります。
あなたはどのようにお考えでしょうか。
2018.08.01