みらいブログ

2017.01.30

「懲役刑」が無くなる!?

佐藤 邦男

 お正月の新聞記事で、「懲役刑」が廃止されるかもしれないという記事に触れました。
 「懲役刑」とは、刑務所で刑務作業をさせることです。刑務所内には工場(作業場)があり、受刑者は日々もの作りなどに取り組んでいます。犯罪に対する応報や教育目的のため、国が受刑者に対し強制的に労働をさせる。それが「懲役刑」なのです。
 「懲役刑」以外の刑罰としては、「死刑」、「禁錮」、「罰金」、「拘留(こうりゅう)」、「科料(かりょう)」があり、刑法9条に定めがあります。
 「死刑」、「罰金」についてはご存知のとおりです。馴染みのない言葉として、「禁錮」、「拘留(こうりゅう)」、「科料(かりょう)」があります。「禁錮」は刑務作業をさせずに室内に閉じ込めること、「拘留」は1日以上30日未満の短期間刑事施設に収容すること、「科料」は1円以上1万円未満の少額の金銭を納付させること、です。
 法務省は、「懲役刑」と「禁錮刑」を廃止・統合して、教育プログラムを重視した新たな刑罰を創設することを検討しています。
 その理由としては、最近は受刑者も高齢化が進んでおり、例えば、万引きを繰り返す高齢者に刑務作業をさせても再犯防止につながりません。むしろ、受刑者の更生のためには心理カウンセリングや心理療法を受けさせて教育をする方が高い効果が見込めると言われています。
 日本では、すでに、性犯罪などでは、教育プログラムを受刑者に実施する取り組みが始まっており、法務省のウェブサイトでも研究結果が公表されていますが、窃盗や傷害などの件数が圧倒的に多い受刑者についても、このような取り組みが始まれば、刑務作業を全廃するわけではないにしろ、画期的であると言えます。
 記事によれば、早ければ2018年の通常国会に法案提出されるとのことです。もし、この法案が成立するとすれば、100年ぶりの大改革です。私たち弁護士の刑事法廷での弁論も変わることでしょう。引き続き注目する必要がありそうです。

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