みらいブログ

2018.10.02

配偶者の居住権に関する民法の改正について

深田 健介

1 民法等の改正について
 平成30年7月6日に民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律が国会で成立し、7月13日に公布されました。この法律により民法の一部が改正されましたが、今回は、特に配偶者の居住権に関する改正部分について取り上げます。
 
2 配偶者の居住権について
 今回の改正法で、配偶者短期居住権と配偶者居住権という似た名称の2つの権利が創設されました。これは、被相続人(亡くなった人)の所有する居住建物(自宅)に住んでいた配偶者(被相続人の夫又は妻)の生活を被相続人の死後も保護するために新設されたものです。
 この2つの権利には、概ね、以下のような特徴があります。
 
3 配偶者短期居住権
 配偶者短期居住権は、残された配偶者が、相続開始後の一定期間だけ居住建物に無償で住み続けることができる権利です。
 被相続人の配偶者(夫又は妻)が、被相続人の所有する居住建物に、相続開始の時に無償で居住していた場合に、この権利が認められます。必ずしも被相続人と同居している必要はありません。
 この権利に基づいて居住できる期間は、次の2つの場合に分けられます。
 ①その居住建物が遺産分割の対象となる場合:遺産分割により居住建物の帰属が確定した日と相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日まで
 ②①以外の場合:居住建物を取得した人が配偶者短期居住権の消滅を申し入れた日から6か月を経過する日まで
 ⇒例えば、被相続人(亡くなった人)が遺言を残しておらず、自宅を誰が相続するか相続人全員で話し合って決めるようなケースは上記①に当たります。遺産分割の話し合いが6か月を超えてもまとまらない場合でも、話し合いが成立するまではこの配偶者短期居住権に基づいて無償で居住することが認められます。被相続人が遺言で居住建物を第三者に遺贈していたようなケースは上記②に当たります。
 
4 配偶者居住権
 配偶者居住権は、相続開始後、期間の定めがない限り、終身の間その居住建物に無償で住み続けることができる権利です。
 配偶者居住権は、被相続人の配偶者(夫又は妻)が、被相続人の所有する居住建物に、相続開始の時に居住していた場合であって、「遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき」もしくは「配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき」のいずれかに該当する場合に取得することができます。
 また、上記以外にも、家庭裁判所の審判で取得できる場合があります。
 
5 適用開始時期
 この配偶者の居住に関する2つの権利は、新法が公布されてすぐに適用があるわけではありません。今回の改正法公布の日(平成30年7月13日)から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日以後に開始した相続について適用されることになっており、それ以前に開始した相続には適用されませんので、ご注意ください。
 
6 弁護士にご相談を
 配偶者の居住権に関する今回の改正は、従来の遺産分割の方法に大きな影響を及ぼすことが予想されます。また、残される配偶者のみならず遺言を残す方にも関係があります。そのため、この制度の適用に関しては、ぜひ弁護士にご相談ください。
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