児童福祉法改正と「新しい社会的養育ビジョン」
2016年に児童福祉法が改正され、子どもには家庭において養育される権利があること、国や地方自治体は子どもが家庭で養育されるよう家庭を支援をしなくてはならないことが明記され、他方、家庭が適切に子どもを養育することが困難な場合には、子どもは里親や特別養子縁組、またはそれに準じる養育環境(少人数制のファミリーホームなど)で養育される(社会的養育を受ける)ことが原則とされました。そして、去年(2017年)8月には、改正された児童福祉法の考えを実現するための手順と工程を具体的に示した「新しい社会的養育ビジョン」が発表されました。
従来の日本では家庭に恵まれない子どもは児童養護施設で養育されることが原則でしたので、今回の改正は画期的ですが、里親になろうとする人の数は現実にはまだまだ少ないので、実現には相当時間がかかると見込まれます。
子どもアドボケイトとは
ところで、「新しい社会的養育ビジョン」は、社会的養育を受けているすべての子どもが、年齢に応じて意見を適切に表現するためにアドボケイトを利用できるようにするという、新しい制度の創設もあわせて提言しています。
アドボケイトとは、「自己の権利やニーズを自分自身で主張することが困難な方のために、その方の権利やニーズを代弁をする者」をいいます。自己の権利やニーズを自分自身で主張することが困難な方の例としては、通常、高齢者や障がい者が挙げられますが、子ども、なかでも家庭を離れて生活する子どもは、自己の権利やニーズを自分で主張することが困難な場合が多いのでアドボケイトの必要性が特に高いといえます。
「新しい社会的養育ビジョン」の念頭にあるのはイギリスの子どもアドボケイト制度だと思われます。
イギリスでは、1991年に子どもの権利条約の批准後、子どもの意見表明を支援し権利擁護を図るため、子どもの代弁を行う専門職=子どもアドボケイトの養成、活用が始まりました。そして、2002年の児童法改正で、法律上、すべての地方自治体に、家庭を離れて生活をしている子どもが、その養育について意見表明をする際、アドボケイトを手配するよう義務付けたことから、子どもアドボケイトの本格的活用が始まり今日に至っています。
子どもアドボケイトの養成と活用
「新しい社会的養育ビジョン」では、平成31年度に家庭を離れて養育を受けている子ども(社会的養護を受けている子ども)への訪問アドボケイト事業に関しモデル事業を行い、それに基づき、必要な財源を確保し、できるだけ早期にアドボケイト事業を実現するよう提言しており、今後は子どもアドボケイトの養成が急務となります。
大阪では2016年から、イギリスの子どもアドボケイトを日本に紹介した研究者の堀正嗣さんを中心とする民間の研究会の主催で子どもアドボケイトの養成講座が実施されるようになり、すでに、いくつかの児童養護施設で、子どもアドボケイトと子どもの定期面接が実施され、子どもの権利擁護がはかられています。
広島でも、今後、大阪の養成講座を参考に子どもアドボケイトの養成を行い、家庭を離れて生活している子どもたちを支援できればと思います。