このタイトルを見て、すぐにピンとくる方もいらっしゃるかもしれません。米倉涼子さん演じる、どの医療機関にも所属しないフリーランスの外科医のドラマ中の有名なセリフですね。
医者の場合は珍しいでしょうが、近時、個人がインターネット経由で業務を受注する就業形態の普及に伴い、どの会社や団体にも所属しないフリーランスの個人事業主が増加傾向にあるといわれています。これまでも、プロスポーツ選手や芸能人も、各球団や各チームあるいは各芸能事務所から個別に依頼を受けて仕事をしている関係に立つため、労働者ではなく、個人事業主とされてきました。
特に、プログラマーなどの技術者の様な専門性のある個人事業主については、人材不足により報酬が高騰することがあります。そこで、これを防止しようと人材を必要とする会社同士が報酬の上限を定める申し合わせを行ったり(カルテル)、あるいは個人事業主に対して仕事を依頼する際に、不当に他の競合会社から仕事を受注しないことを条件とする契約(排他条件付き取引)を結ぶ事を求めたりすることも考えられます。しかし、カルテルや排他条件付き取引は、独占禁止法に違反する行為です。
個人事業主は、会社と雇用契約を結んでいるわけではありませんので、労働基準法の「労働者」に当然には当たらないため、労働法分野で保護される可能性は乏しくなります。他方で、個人事業主が相応の報酬が得られず、また自由な取引が出来ない事態に陥れば、不合理な結果になります。
そこで、会社の人材獲得競争という取引分野の観点から、労働法規制を超えた独占禁止法の適用関係の検討のため、平成29年7月に、公正取引委員会事務総局の競争政策研究センターに「人材と競争政策に関する検討会(座長 泉水文雄教授)」が設置されました。
フリーランスの個人事業主は、実態は労働者と似た関係に立つ場合が多いにも関わらず労働法の適用が難しい以上、独占禁止法が、どのように適用されるのか、今後の公正取引委員会の動向が注目されます。