みらいブログ

2016.10.26

映画「Sully」

二國 則昭

 この題名を聞いて、日本名「ハドソン川の奇跡」と分かる人は、相当な映画好きでしょう。原題は機長の愛称です。この映画は、2009年1月に離陸したばかりの飛行機(エアバスA320)がハドソン川に着水して乗客全員が無事であった現実の事故をもとにして制作されたものです。
 155人の乗客を乗せた飛行機が離陸してまもなく鳥の集団と遭遇し、2つあるエンジンが停止して、川に着水するまでの状況は、それなりにドキドキさせます。しかし、私は、着水についての機長の責任の有無を判断する連邦運輸安全委員会(NTSB)の公聴会(機長も出席)の場面を、興味をもって見ました。公聴会では、傍聴人がいる部屋で製造会社であるエアバス社が、当時の飛行記録に基づきコンピューターにより着水前の状況を映像により再現し、ハドソン川に着水せずに、近くの飛行場に無事に着陸できることを示します。この映像によれば、機長の着水の判断は誤りで、かえって乗客を危険にさらしたことになります。つまり、機長は近くの飛行場へ行くべきで、川への着水の判断は誤りのように思われます。
 ここで、出頭していた機長は、近くの飛行場へ行くことをエンジンが停止してから決断する時間、少なくとも35秒間を加えるように申し立てます。再現場面では、エンジンが停止してから近くの飛行場へ行くと機長が判断するまでの時間が、考慮されていなかったのです。この時間を加えて再現すると、35秒後ではすでに、飛行高度が低くなっており近くの飛行場へ無事に着陸することはできないことになりました。
 これにより、機長の判断が正しかったことが証明されました。NTSBは、機長に責任がないことを認めます。
 監督はクリント・イーストウッドで、淡々と描き、機長はトム・ハンクスで、好演しています。なお、AI(人工知能)が、今後発展してこのようなトラブルの場面において瞬時に判断できるようになるとこんな映画は制作できなくなるのでしょうか?

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