みらいブログ

2019.09.20

民事裁判のIT化(e裁判)

成廣 貴子

  先日、第21回弁護士業務改革シンポジウムが京都で開催され、「やっときた!もうすぐ実現、e裁判。次はAIを考えよう。」という分科会に参加しました。弁護士の関心は高く、全国から多数の弁護士が参加していました。ここでは、分科会でご報告のあったe裁判についてご紹介します。
 
 そもそもe裁判とは何でしょうか。
 政府の「未来投資戦略2017」を受けて、2017年10月に「裁判手続等のIT化検討会」が設置され、2018年3月に同検討会の取りまとめが発表されました。そこでは、3つのe(e提出、e事件管理、e法廷)についての実現方針等が記載されています。
 e裁判の本格的実施には法改正が必要ですが、法改正をしないで行える範囲でのe法廷が来年2月頃から一部の地方裁判所で実施される予定になっています。広島地方裁判所本庁もその一つです。具体的には、民事裁判の弁論準備手続や書面による準備手続等における期日や協議をWEB会議等で行うとされています。どのような事件でどのように行うかの詳細は、各地の裁判所と弁護士会で協議を進めている段階です。
 広島を含め、各地で行われたITを用いた模擬裁判では、接続トラブルやIT環境の問題、WEB会議利用のメリットが見えにくい、弁護士への周知が不十分等の課題が見つかりました。
 
 それでは、e裁判を先行して行っている海外ではどのような状況でしょうか。
 シンガポールでは、2000年にe提出及びe事件管理が実現し、2013年には全国リニューアルされています。テレビ会議システムを利用したヒアリングは可能とされていますが、国土が狭く、移動コストが小さいため、e法廷利用のニーズは高くありません。
 韓国では、2010年から民事通常訴訟についてe提出及びe事件管理が実現し、その後、順次、特別法の訴訟手続にも適用領域を広げています。他方、首都に弁護士が一極集中しているためか、e法廷は整備されていません。
 アメリカ(連邦)では、1996年に連邦裁判所の裁判情報へのアクセスシステムが導入された後、e提出及びe事件管理が実現しています。アメリカでは、法廷が開催されるトライアルにまで進む事件が少なく、トライアルにおける法廷は陪審員に対するアピールが重視されるので、e法廷利用のニーズは低いようです。ただし、トライアル前のデポジション等では、裁判所の裁量でWEB会議システム等が利用されています。
 なお、e提出は、事件記録(訴状、答弁書等)を電子情報の形で提出することを指すことが多いです。e提出によることが強制されているか否かは、国によって異なります。e事件管理は、各国共通して、ユーザー単位及び事件単位で、事件情報と事件記録がデータベースで管理され、当事者、その代理人及び裁判所による検索や参照が可能なシステムを指します。
 
 国によって裁判制度やニーズが異なるため、他国の例を参考にしつつも、各国ごとの取り組みが求められています。日本における民事裁判のIT化(e裁判)がどのように進んでいくか、注視していきたいと思います。
 
 
 
 
 
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