みらいブログ

2017.12.13

生徒の髪型・髪の色の自由?

半澤 茜

 最近、学校から地毛を黒く染めるよう強要されたのは違法であるとして高校生の方が裁判を起こしているという報道がありました。
 髪型や髪の色は本来、自分できめることができますが、学生の場合、学校から髪型や髪の色が指定されることがあります。そして、髪型や髪の色をめぐり生徒が学校とトラブルになり裁判にまで発展した例は古くからあります。
 「髪型」に関しては,昭和60年ころ、男子生徒の丸刈りを義務付ける公立中学校の校則が問題となり裁判となっています(※1)。その後も、パーマ禁止を定める私立高校の校則が問題となった平成8年の裁判など(※2)、生徒の髪型に関する裁判はいくつかあります。これらの裁判では、裁判所は比較的簡単に、学校の校則や指導は違法ではないと判断しています。学校は教育方針などを自由にきめることができる、丸刈りもパーマ禁止もその自由の範囲内である、というのが基本的な発想のようです。
 では、「髪の色」も学校が自由に指定できると考えていいでしょうか。この点については、教員が中学生の頭髪を(保健室で!)黒染めしたことについての裁判(大阪地方裁判所平成23年3月28日判決)があります。大阪地裁は結論として教員の行為に違法性はないと判断しています(高等裁判所でも同様の判断がされています)。
 人によっては髪染めに用いられる薬剤によってかぶれてしまうことがありますが、この裁判の判決文からは、かぶれといった健康被害のリスクについて、裁判所できちんと評価が行われたとはいえないように思います。私自身、髪を染めた時にかぶれて大変な思いをしたことがありますし、裁判所にはこうしたリスクについて、もう少し丁寧に検討すべきだったと感じます。
 また、生まれつき、髪の色が薄い生徒に対し、地毛を敢えて黒く染めるように指導することは、生まれつきの姿、ありのままの姿を否定するという側面があるように思います。そのような校則や指導は、いかに学校の教育方針だとしても許されないと判断される余地があると思います。
 頭の地毛の黒染め強要の可否が争点となる事例について、これから、裁判所でどのような判断がなされるのか関心があります。
※1 昭和60年11月13日熊本地方裁判所判決
※2 平成8年7月18日最高裁判所第1小法廷判決

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