みらいブログ

2019.08.06

旧優生保護法国賠訴訟判決

森井 基嗣

 平成8年まで優生保護法という法律がありました。この法律では、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」という目的の下、障がいがある方などを対象に本人の同意がなくても強制的に不妊手術が行われてきました。
 この法律に基づき強制的に不妊手術をされた方々が、重大な人権侵害であることを主張し、各地で国家賠償請求訴訟が提起されています。
 そして、本年528日、その国家賠償請求のうち、仙台地方裁判所に提訴されたものについて、判決が出されました。
 判決では、子を産み育てるかどうかを意思決定する権利(リプロダクティブ権)を示しました。リプロダクティブ権は、人格的生存の根源に関わるものであるとした上で、憲法13条の法意に照らし人格権の一内容を構成する権利として尊重されるべきという判断を裁判所として初めて示しました。その上で、優生保護法による強制不妊手術については、憲法違反だと明確に示しました。
 しかしながら、被害者は救済されたかというとそうではありません。
 判決では、国会が何らかの立法措置を執らなかったことは違法ではないことを指摘し、除斥期間の経過を理由に賠償請求を認めませんでした。
 ここでは、除斥について、少しコメントしようと思います。除斥については、判決の中でも指摘されているとおり、法律関係の速やかな確定を図るためのもので、被害者側の認識にかかわらず20年の経過で請求権を失うこととなります。
 本件に関して言えば、冒頭で示したとおり、強制不妊手術が行われた対象は、一定の障がいがある方です。被害者からすれば、その場でも抵抗することができず強制的に不妊手術をされ、また、その後の社会においても、優生保護法の存在とともに優生思想が蔓延って、声を上げることもできず、時間が経過していったわけです。
 加えて、本件では、法律に重大な憲法違反があった点が重要です。除斥は、法律関係の速やかな確定が目的です。しかし、その目的よりも、違憲の法律によって被害を受けた方を救済する方がはるかに重要なのではないでしょうか、もっといえば、違憲の法律を運用していた国を救済する方向での法律関係の速やかな確定が必要なのでしょうか。
 疑問が残る判決でした。仙台地裁の判決は控訴されているようですので、控訴審も注目したいと思います。
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